『800文字のエッセイを書いてください』
そう言われた時、「800という文字数」にどんなイメージを持ちますか?
800文字と言えば、原稿用紙2枚分。
それくらいの文章なら、自分にも書けると思うでしょうか。
そんな少ない文字数ではむしろ足りない、物足りないと感じる人もいるかもしれません。
岸本葉子さんの著書『エッセイ脳』では、800から1600文字のエッセイの書き方について「これでもかっ!」というくらい丁寧に説明されています。
読み物というより、「やさしい教科書」という感じで、エッセイとは?からはじまり、具体的な文章技術までが分かりやすくまとめられていました。
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エッセイとは他人が読みたくなる文章であること
岸本さんはエッセイの定義として、「自分の書きたいことを、他人が読みたくなるように書くこと」としています。
エッセイは、ノンフィクションのひとつ。小説のように物語を創作するわけにはいきません。
自分が書きたいと思ったことが題材になるので、それをいかに面白く、他人に読んでもらうかが大事なんです。
自分ではとても面白いことを書いたつもりでも、読者の反応が「あ、そう」とイマイチだったらどうでしょう。
『エッセイ脳』では「あ、そう」という反応が何より怖いと書かれています。
読者に残念な読後感を与えてしまうと、新しい文章を書いてもそっぽを向かれてしまうわけです。
エッセイというと自分の日常を切り取って書く、というイメージがありますが、それだけでは不十分。他人が読みたくなる技術が必要なんですね。
他人が読みたくなるエッセイって?
では、他人が読みたくなる文章って何でしょう。
『エッセイ脳』では「読みやすい文章」「興味が持てる題材」というふたつのポイントを挙げていました。
読みやすい文章については、学習によって身につけられます。
本書でも、構成や起承転結の捉え方、エッセイを支える3種類の文章、書き出しについて細かく解説されていました。
興味が持てる題材については、ちょっぴり身につけるのが難しい。『エッセイ脳』では題材をほかの言葉で「個別」「具体的」と表現しています。
題材とは「具体的なこと」であり、読者が「へぇーっ、そうなんだ!」と思える内容です。
もちろん、日常で自分が感じた驚きや出来事を書くのもエッセイですが、ひねりがないと「あ、そう」で終わってしまいます。
そこは躍動感ある文章や描写でカバー!…とはいかず、800という少ない文字数では、文章で読者を惹きつけるのが難しいんです。
そういう意味で「興味が持てる題材」というのは「読みやすい文章」にくらべて難しくなります。
じゃあ自分には面白いエッセイは書けない…?と不安になりますが、そんなことはないようです。
まずは「読みやすい文章」を書く努力をすることで、日常で自分があっと驚いた出来事を面白く伝えていきましょう、という内容でした。
文章(エッセイ)はいきなり書き始めない
『エッセイ脳』では、たとえ800文字でも、いきなり書き始めたら面白いエッセイはできない、とあります。
私も20年間だと、書いたエッセイの数は数千となると思いますが、それだけ回を重ねても、文章をいきなり書きはじめることはしません。必ず前もって紙に構成を書きます。その方が結局は、能率がよいからです。(p33)
岸本さんは『エッセイ脳』の中でで、どんなに短いエッセイでも、最低3回は書くと言っています。
他人に面白く読ませるため、あるいは800字から1600文字という字数制限を守るために、書きはじめる前の「構成」が大切なんだそうです。
自分が書きたいことを書く、だけであれば、いきなり書き始めてもいいでしょう。
もしも誰かに読んでもらいたい、面白いと思ってもらえる文章が書きたいというときには、いきなり書き始めるのではなくて、まずは何をどういうふうに書くか、考えてみてください、ということです。
800文字で面白いエッセイは出来上がる
今回は岸本葉子さんの『エッセイ脳』について紹介しました。
なんとなく雰囲気でエッセイを書いてみたいと思っている人には、「なんだかややこしいな…」と匙を投げたくなる内容かもしれません。
しかし、エッセイに限らず、自分の書いた文章を「面白い!」と読んでもらいたい人にとっては、とても参考になる1冊です。
本格的にエッセイを学びたいから講座を検討中なんて人も、とにあえずこの1冊を読んでみてください。めちゃくちゃ学べますよ。
https://ayblg.work/entry/post-2099/
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