
『読みたいことを、書けばいい。』田中泰延・著
結論。読んでよかった。
大分前から知ってはいたけど、最近ようやく手に取った1冊です。
書店ではじめて見かけた時、「おっ面白そう」と「いやいや…(ダメでしょ)」って気持ちの両方があったのは確か。けど、きっとイマドキの炎上系というか煽り系の本なんだろうなあって気持ちが強くスルーしていました。
しかし「今でしょ!」の林修先生や、ほぼ日の糸井重里さんが絶賛しているというのを知って、これはなにか期待できそうだ、と単純に手のひら返し…(笑)文章を書くすべての人におすすめです。
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「読みたいことを書く」の意味
私が読むのをためらった理由のひとつが、タイトル。
『読みたいことを、書けばいい。 人生が変わるシンプルな文章術』
本当に、個人的な先入観なんですけど、「そんなこと言ったら、無責任で好き勝手なネット記事が増えるだけじゃないの!?」って気持ちが湧いたんですよね。
日記ならともかく、文章術というからには、読み手がいるわけで。それなのに「(自分が)読みたいことを、書けばいい」の……?
しかしこれは見当はずれもいいところで。「読みたいことを書く」というのは、
わたしが言いたいことを書いている人がいない。じゃあ、自分が書くしかない(p.102)
が出発点であるということ。他人がすでに同じことを書いているなら、自分は読み手のままでかまわないということだったんです。
内面語りはつまらない。巨人の肩に乗ろう
じゃあもう書くことなんてないよ!!!!!っていう人もいるかもしれませんが、それでも書きたい人はどんなところを意識すればいいのか。
それについては『第3章 どう書くのか 「つまらない人間」のあなたへ』で紐解かれています。(タイトルが辛辣…)
第3章はその1 つまらない人間とは「自分の内面を語る人」からはじまり、その8 「起承転結」でいい、まで。
その中で印象に残ったのが「その5 巨人の肩に乗る」です。
そもそも「巨人の肩に乗る」は偉人が使った言葉で、これまでに積み重ねてきた歴史・先人たちの功績が巨人のようにあり、その肩の上に乗って物事を見渡さない限り、進歩はないということ。
これを「読みたいことを書く」に当てはめると、
ここまでは議論の余地がありませんね。ここから先の話をしますけど(p.179)
ということになるわけです。
これだけ読むと、なにがシンプルな文章術やねん!めっちゃ書くハードル上がってないか????ってなるかもですが、もう『読みたいことを、書けばいい。』が無責任なタイトルなんて誰も思わないでしょう。(思っていたのは、わたしですが…(;^ω^))
「物書き」は調べるが9割。愛した部分を全力で伝える
この本で、繰り返し読みたいくらい気に入っている文章を紹介します。
深夜、暗い部屋で腰の痛みに耐えながらキーボードを打って、自分で書いたものに自分で少し笑う、それが「書く人」の生活である。(p.107)
「なぜ書くのか(書きたいのか)」という話に繋がってくるのですが、もしも仕事として書く・書いてお金をもらいたいと考えているのなら、
自分が面白いと思える文章を書くことを忘れちゃいけないって事実に胸を突かれました。
評価をするのはまわり、けど面白いかを決めるのは自分、という内容があり、まわりを気にし過ぎてもイヤになるけど、自分が面白くないものを書いて何か意味あるの???って話です。
そのために書く内容をしっかり調べるのは当たり前。そして自分が愛した部分をしっかりと文章にできなきゃ、……くすっとすら笑えないですよね。
イマドキの文章術本かと思いきや、全然違いました。
この著者が乗っかている巨人は、相当大きい。