
気まぐれに立ち寄った渋谷の書店にて。
話題の本が並んだ一角でパッと飛び込んできた『デジタル・ミニマリスト 本当に大切なことに集中する』(カル・ニューポート /池田真紀子 訳)という1冊。
タイトル通り(?)シンプルですっきりとした装丁が、何となくわたしの好み。大原扁理さんの本と雰囲気似ているなあって勝手に親近感(正確には彼はミニマリストではないけれど)。
https://ayblg.work/entry/post-1019/
SNSやらアプリゲームを“だらだらとやり過ぎている”自覚がある今のわたしに、なんとなく必要かもと思って手に取ってみました。

目次を開いて、すこーし悩む…。「“いいね”をしない」「SNSアプリを全部消そう」!?
もしかして反デジタル・ツール主義で、極端なことしか書かれていないんじゃ…。
と、いうことで、思い切ってジャケ買いしてみました!
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スマホは悪くない。悪いのは「付き合い方」だ
それでまあ、結論、良書だったのでブログに書いているのですが。
本書をざっくり説明すると、めちゃくちゃ便利なスマホ(デジタル・ツール)との付き合い方を見直そうよ!という話でした。
デジタル・ツールの過度の使用がもたらす疲労感。主体性を弱め、幸福度を低下させ、負の感情を増幅し、より大事な活動から注意をそらさせる力――私はそういった憂慮すべき問題の数々を目の当たりにして初めて、現代文化の支配者たるテクノロジーとのあいだに危険な関係を築いている人があまりにも増えていることに気づいた。(pp.10~11)
私たちは、どのツールを、どのような理由から、どのような条件で使うべきか、自分で判断できるようにならなくてはいけない。これは反動主義ではない。当たり前の理論だ。(pp.292~293)
なんとなく、スマホの“使いすぎ”を自覚していて、よくないよなあ…と感じている人は多いはず。しかし、その気持ちが危機感までには及んでいないのが現状ではないでしょうか。
本書の言葉を借りれば、テックの神々があたえたもうた楽しい贈り物で遊んでいると無邪気に思いこんでいるだけ。…これがよくない。
スマホ依存の原因は自分ではなく企業努力のせい!?
自分が本気を出せば、スマホを見る時間は減らせる。(ただ本気出してないだけ)
……これがそもそも、じつは大きな間違いだったんです。
しかし、このタイプのちょっとした軌道修正を試したことがある人ならおそらくもう気づいているように、意思の力や小さな工夫、漠然とした決めごとだけは、ユーザーの意識に横暴に侵入してくる新しいテクノロジーを退けるのには力不足だ。デジタル・ツールは使わずにいられなくなるように設計されている。しかもその行為依存を助長する文化的な圧力はすさまじく、小手先の対処法ではとうてい歯が立たない。(pp.12~13)
これらのテクノロジーは多くの場合、使うのを我慢できなくなるように設計されている。ここで強調しておきたい点は、抵抗できないのは個人の自制心に問題があるからではなく、莫大な利益を生むように策定されたビジネスプランが現実になったということだ。(p.45)
もうね、本書を読んでいると企業がいう「ユーザーファースト」なんて、やっぱり方便なんだなって悲しい現実と直面…。
本書には「あなたの時間=彼らの儲け」というパワーワードまで登場します。
散らかったデジタル・ライフが有害な理由はこれだ。私たちは最新のアプリやサービスが約束する小さな利益の誘惑につい屈してしまいがちであり、しかもその結果、私たちのもっとも価値ある資産――時間――に換算したコストに鈍感にもなりがちだ。(p.63)
必要なのは「ハック」じゃない、新しい「哲学」だ!
企業努力により、デジタル・ツールとの付き合いが中毒やら依存に近くなっている人が多いいま、「寝室にスマホを持ち込まない」とか「通知を切る」だとか、そんな小さな対策(ハックもしくはティップス)では歯が立たないといいます。
そこで本書の核心ともいえる「デジタル・ミニマリズム」。
デジタル・ミニマリズム
自分が重きを置いていることがらにプラスになるか否かを基準に厳選した一握りのツールの最適化を図り、オンラインで費やす時間をそれだけに集中して、ほかのものは惜しまず手放すようなテクノロジー利用の哲学。(pp.48~49)
本書は決して、スマホの存在意義を否定していません。
時計を巻き戻すどころか、インターネットによって人類史上かつてなかった数の選択肢が一般の人々に提示されるようになったおかげで、一種の“余暇のルネッサンス”が起きている。インターネットは2種類の貢献をしている。一つは、興味の対象に関連したコミュニティを見つけやすくなったこと。もう一つは、特定の趣味を追求するのに必要な情報は容易に見つからない場合も少なくないが、インターネットのおかげでアクセスしやすくなったことだ。<<中略>>質の高い余暇活動を開拓するのに、現代程恵まれた時代はかつてなかっただろう。(p.226)
正しく使えば、人間が幸せに生きるための余暇活動(空いた時間に自主的におこなう活動)の手助けになるとまで書かれています。
病的なまでに近づいてしまったスマホとの距離感。これを適正に戻す方法は、ぜひ本書で確認してみてください。
「暇つぶしにスマホ」から脱却しよう
もうなんとなく、分かるとは思いますが、スマホで「スマホ やめるには」「スマホ 依存」と検索して出てくる内容では、とうてい太刀打ちができません。だって、デジタル・ツールは“そういうふうにできている”んですから。
でも、何か変えていきたい。そうだ、時間を持て余してスマホを取り出すかわりに、本でも開いてみようじゃないか。って気持ちになったなら、その記念すべき1冊目に、ぜひ本書を手に取ってみてはいかがでしょうか?